映画館の料金表を見ていて、昔から少し引っかかる言葉があった。
「夫婦50割引」
夫婦のどちらかが50歳以上なら、ふたりで映画を安く観られる。
いいサービスだと思う
でもゲイの自分にとって、「夫婦」と書かれているだけで、なんとなく自分とは関係のない割引だと思っていた。
男ふたりで窓口に行って、
「これ、僕たちでも使えますか?」
と聞くのも、少し面倒だ。
断られるかもしれない。
説明しなければならないかもしれない。
たかが映画の割引なのだけれど、その「たかが」のために、自分たちの関係を説明するのは意外と億劫だったりする。
そんなこともあって、これまであまり気にしてこなかった。
ところが最近、状況が少し変わっていることを知った。
きっかけのひとつが、イオンシネマ津田沼Southだった。
料金表には現在も「夫婦50割引」と書かれている。
公式サイトでも、夫婦のどちらかが50歳以上なら、同じ作品・同じ上映時間を観る場合、ふたりで2,600円という案内になっている。 (イオンシネマ)
では、男性同士のカップルはどうなるのだろう。
気になったので、実際にイオンシネマ津田沼Southへメールで問い合わせてみた。
返ってきた回答は、想像していたよりずっと柔らかいものだった。
イオンシネマ全体として「夫婦50割引」について統一されたルールがあるわけではないという前置きはあったものの、津田沼Southでは、
・同じ作品、同じ上映時間であること
・ペアのどちらかが50歳以上であること
という条件を満たしていれば、パートナーシップ制度を結んでいる同性カップルについても割引を適用するとのことだった。
そしてイオンシネマ津田沼Southでは、『まどマギ』を観た。
映画そのものとはまったく関係のない話なのだけれど、「男同士だからこれは対象外だろう」と最初から諦めなくてもいい時代の変化と柔軟さを感じた。
思いがけず、別の意味でまどマギを観たことを忘れないだろう。
さらに今日、品川のT・ジョイ PRINCEに映画を観に行った。映画も高いのでレイトショー割引でバックルームを観るつもりだった。
券売機で買おうとすると、レイトショー割引よりも安いペア50割引があった。
画面に特に男女の指定はなく、恐る恐るチケットを買った。
普通に入れた。普通すぎて気にしていたのがバカバカしいとさえ思えた。
映画の後、ホームページで割引条件を見ると、どちらかが50歳以上の2名1組で、同じ上映回を見ることのみが条件だった。
それだけ。
料金は、ふたりで3,000円
受付で自分たちの関係を説明する必要もなかった。
ゲイですと言う必要もない。
同性カップルです、とわざわざ宣言する必要もない。
調べてみると、同じような映画館はほかにもあった。
たとえばシネマサンシャイン。
こちらはさらに明確で、公式FAQに、
ペア50割は「性別を問わず」利用できる
と書かれている。
どちらかが50歳以上だと確認できれば利用できる。 (シネマサンシャイン)
他のT・ジョイ系列も「どちらかが50歳以上の2名1組」というルールで、公式FAQ上、男女や婚姻関係を条件にはしていない。 (T・ジョイ)
「夫婦50割」だったものが、
「ペア50割」になっている。
たった二文字くらいの違いなのだけれど、利用する側からするとかなり大きい。
どんな関係なのかを映画館が判定する必要なんて、本来あまりないのかもしれない。
サービスの中に少しずつ、男女である必要のないものが増えている。
それは「LGBTフレンドリーです」と大きなレインボーフラッグを掲げることとは、また少し違う、小さいけれど現実的な変化だ。
でも、こういう小さな変化のほうが、日常生活では案外うれしかったりする。
男ふたりで、映画を観る
映画館に入って、カップルシートやペアシートで普通に座って観る
特別なことは何もない でも少し前まではそれがとても特別で、できないことだった。
こうして以前はできなかったことがだんだん普通になってゆく、その時代の変化を感じることもまんざら悪くないのかもしれない。

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