運動しなくても筋肉と記憶に変化? 45〜65歳を対象にした「クレアチン」最新研究

「クレアチン」と聞くと、ボディビルダーや筋トレ好きが飲むサプリ、というイメージを持っている人も多いかもしれない。

ところが2026年8月、そんなイメージを少し変える研究が発表された。

45〜65歳の運動習慣のない男女を対象に12週間クレアチンを摂取してもらったところ、本格的な運動をしなかったグループでも、除脂肪量や筋力、筋持久力、さらに一部の記憶・認知機能の指標に改善がみられたという。(PubMed)

身体のラインが気になる。

最近、以前より筋肉が落ちやすくなった気がする。

人の名前や言葉がすぐ出てこない。

40代、50代を過ぎると、そんな変化を感じるゲイ男性も少なくないだろう。

今回の研究は、クレアチンが単なる「筋トレ用サプリ」ではなく、ミドル世代以降の身体と脳の健康を考えるうえでも興味深い栄養素かもしれないことを示している。

ただし、かなり重要な注意点もある。

「クレアチンを飲めば運動しなくてもムキムキになる」という研究ではない。

何が分かったのか、論文を詳しく見ていこう。

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45〜65歳の64人を12週間追跡

研究は米国テキサスA&M大学の研究チームが行い、スポーツ栄養学の専門誌『Journal of the International Society of Sports Nutrition』に2026年8月に掲載された。

対象となったのは、もともと運動習慣の少ない45〜65歳の健康な成人。

研究を完了したのは64人で、

  • 平均年齢:約54.5歳
  • 女性40人
  • 男性24人
  • 平均体重:約84.5kg

だった。(PubMed)

参加者は、運動をしないグループと、運動+減量目的の食事介入を行うグループに分かれ、その中でさらに、

クレアチン・モノハイドレートを1日10g摂取するグループ

または

プラセボを摂取するグループ

に分けられた。

クレアチンは5gを1日2回、合計10g。

期間は12週間だった。(PubMed)

身体組成はDXAという方法で測定され、筋力、筋持久力、血液検査に加え、記憶力や反応速度など複数の認知機能テストも行われている。

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一番驚くのは「運動なし」のグループ

研究で特に興味深いのがここだ。

運動プログラムにも食事制限にも参加せず、クレアチンだけを摂取した人たちでも、除脂肪組織量が増加した。

6週間後には約0.99kg、

12週間後には約1.1kg増えている。(PubMed Central (PMC))

一方、運動をせずプラセボを摂取したグループでは、ほとんど変化がなかった。

これはかなり興味深い結果だ。

ただし、ここで注意したいのが、「除脂肪量=そのまま筋肉量」ではないこと。

DXAで測定されるlean tissue mass(除脂肪組織量)には筋肉だけでなく、体内の水分なども影響する。

クレアチンは筋細胞内に水分を保持しやすくする作用があるため、

「筋肉が1.1kg新しく作られた」

とまで言うのは正確ではない。

それでも、単なる体重変化だけではなく、同じグループで筋力や筋持久力にも改善がみられたことは注目に値する。(PubMed)

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やっぱり「運動+クレアチン」は強かった

では運動をした人はどうだったのか。

今回の研究では、筋力トレーニングや有酸素運動に加え、1日300〜500kcal程度エネルギー摂取を減らすプログラムも行われた。

そのなかでクレアチンを摂取したグループでは、12週間後、

除脂肪組織量が約1.27kg増加。

さらに体脂肪率は、

約3.24ポイント低下

した。(PubMed Central (PMC))

つまり減量をしながら、除脂肪組織量を維持するどころか増加させたことになる。

これは40代、50代以降のボディメイクを考えると結構重要だ。

年齢を重ねてから極端な食事制限をすると、脂肪だけではなく筋肉まで落としてしまうことがある。

「痩せたけれど、なんとなく身体が貧相になった」

という状態を避けるためには、体重だけを見るのではなく、筋肉を残すことが大切になる。

クレアチンはそのサポート役になり得る、というわけだ。

実際、既存研究をまとめた2025年のメタ解析でも、高齢者ではレジスタンストレーニングにクレアチンを加えることで、トレーニングだけの場合より除脂肪量や下半身筋力が改善する傾向が確認されている。(PubMed)

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クレアチンは「脳」にも関係する

今回の研究が面白いもう一つの理由が、筋肉だけではなく脳の働きも調べていることだ。

実は脳も大量のエネルギーを使う臓器だ。

クレアチンは体内で「ホスホクレアチン」という形でも蓄えられ、ATPと呼ばれる細胞のエネルギー供給システムを支えている。

そのため近年は、

「クレアチンは認知機能にも影響するのではないか」

という研究が増えている。

今回、運動をせずクレアチンを摂取したグループでは、

言葉を時間を置いて思い出すテスト、

単語を見分けるテスト、

画像を認識するテスト

など、一部の記憶機能や情報処理速度に改善がみられた。(PubMed Central (PMC))

運動+クレアチン群でも、記憶や反応速度に関する一部の項目が改善している。

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ただし「頭が良くなるサプリ」ではない

ここはかなり大切だ。

今回の研究では、認知機能のすべてが改善したわけではない。

たとえば、

注意力や情報処理能力を調べるストループテスト、

注意・警戒能力などを見るCorsi Block Task、

ワーキングメモリなどを見るテスト

では、明確な改善は確認されなかった。(PubMed Central (PMC))

研究チーム自身も、認知機能についての結果を探索的な結果と位置づけており、今後より大規模な研究で確認する必要があるとしている。

それでもクレアチンと脳機能の関係は、今回だけ突然出てきた話ではない。

2024年に発表された16件のランダム化比較試験、計492人をまとめたメタ解析では、クレアチン摂取によって記憶力、注意に要する時間、情報処理速度に小さいながら有意な改善が確認された。

一方で、認知機能全体や実行機能については明確な改善は確認されなかった。

特に「記憶」に関するエビデンスの確実性はGRADE評価で「中程度」とされている。(PubMed)

つまり現時点では、

「クレアチンは脳にも何らかのメリットがありそう。ただし万能な認知機能改善薬ではない」

くらいに考えるのがちょうどいいだろう。

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血糖値にも変化が

さらに今回、運動をせずクレアチンを摂取したグループでは、HbA1cの低下も確認された。(PubMed Central (PMC))

HbA1cは、過去1〜2カ月ほどの平均的な血糖状態を反映する指標として使われる。

中年以降では糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクが上がってくるため、興味深い結果ではある。

ただしこれについても研究者は、

「一般的な血糖改善作用が証明されたわけではない」

としている。

今回の参加者は64人と小規模であり、血糖関連の結果も探索的な解析だからだ。

クレアチンを糖尿病予防薬のように考えるべきではない。

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40代以降のゲイにとって、なぜ少し気になる研究なのか

ゲイコミュニティでは、年齢に関係なく身体への関心が比較的高い。

筋トレをしている人もいれば、ジムは苦手だけれど体型は維持したいという人もいる。

そして40代、50代になってくるとテーマは少しずつ変わっていく。

単に「胸板を厚くしたい」「腹筋を割りたい」という話だけではなく、

筋肉を落とさないこと。

太りにくい身体を維持すること。

転倒しにくい身体をつくること。

60代、70代になっても自分の足で出かけられること。

そうした意味での「身体づくり」が重要になってくる。

サルコペニアと呼ばれる加齢による筋肉量・筋力の低下は、かなり早い段階から少しずつ始まっている。

クレアチンの面白いところは、

「筋肉を大きくしたい人だけのサプリではないかもしれない」

というところにある。

今回の研究は、その可能性をさらに広げたと言える。

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では、クレアチンだけ飲めば運動しなくていい?

答えはNOだ。

今回の研究では確かに運動なしでも変化がみられた。

しかし、健康に対する運動の効果は筋肉だけではない。

心肺機能、血圧、骨、血糖コントロール、睡眠、メンタルヘルス、身体機能など、運動がもたらす効果をクレアチンだけで置き換えることはできない。

また、これまでに蓄積されている研究全体を見ると、クレアチンは筋トレと組み合わせたときのエビデンスが特に強い。

143研究を対象にしたメタ解析でも、クレアチンには除脂肪量を増やす小さな効果が認められた一方、レジスタンストレーニングと組み合わせた研究のほうが効果はより明確だった。(PubMed Central (PMC))

なので、

「クレアチンを飲むから運動しなくていい」

ではなく、

「運動できない時期でも何らかのメリットがある可能性があり、運動できるなら組み合わせたほうがいい」

という理解が近い。

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今回は「1日10g」。一般的な量より少し多い

もう一つ注意したいのが摂取量だ。

今回の研究では、

クレアチン・モノハイドレート10g/日

を12週間使用している。(PubMed Central (PMC))

これは一般にサプリメントとして長期使用されることの多い3〜5g/日より高めだ。

研究者は、脳機能への効果を狙う場合には比較的高用量が必要になる可能性があることなどを理由に、この量を使用している。

今回の研究で大きな安全性の問題は報告されなかった。

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クレアチニンが上がることには注意

クレアチンを摂取すると、血液検査の「クレアチニン」が少し上がることがある。

今回も運動なし+クレアチン群で血清クレアチニンが約6〜8%増加した。

その結果、クレアチニンから計算されるeGFRが一時的に低下して見える場合もあった。(PubMed Central (PMC))

ただし今回の研究では、値は臨床的な正常範囲に収まっていた。

クレアチンを摂取している人が健康診断を受ける場合には、

「クレアチンを飲んでいる」

と医師に伝えておくといいだろう。

なお、もともと腎臓病がある人や腎機能に問題を指摘されている人、複数の薬を服用している人などは、自己判断で高用量を始めるのではなく医師や薬剤師に相談したほうがいい。

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この研究にも弱点はある

結果は面白いが、一つの研究だけで結論を出すべきではない。

特に今回の研究にはいくつかの限界がある。

まず最終的な参加者は64人と比較的小規模だった。

また、参加者は45〜65歳の健康で運動習慣のない成人であり、結果が若者や70代以上、持病のある人にもそのまま当てはまるとは限らない。

さらに重要なのが、

「運動するか、しないか」は完全な無作為割り付けではなく、参加者自身が選択している

という点だ。

そのうえで各群の中でクレアチンかプラセボかが無作為化されている。

したがって「運動群と非運動群の差」を単純なランダム化試験として比較することはできない。

また認知機能やHbA1cなど一部の結果について、研究チーム自身が「探索的」と明記している。(PubMed)

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「若く見える」より、「ちゃんと年を取れる身体」へ

ゲイコミュニティでは「若さ」や「身体」が価値として強調されることがある。

もちろん身体を鍛えることも、かっこいい身体を目指すことも悪いことではない。

でも40代、50代からの身体づくりは、もう少し長い時間軸で考えてもいい。

50歳の身体は、60歳の生活につながっている。

60歳の筋肉は、70歳の行動範囲につながっている。

旅行に行く。

クラブに行く。

友人と遊ぶ。

好きな人に会う。

一人で自由に暮らす。

そんな日常を長く続けるために必要なのが、筋力であり、認知機能であり、健康だ。

今回の研究が示したのは、クレアチンという非常に古くから研究されてきた成分が、単なる「筋トレサプリ」という枠を越えて、

ミドル世代以降の筋肉と脳の健康を支える可能性を持っている

ということかもしれない。

もちろん魔法の粉ではない。

でも、運動、食事、睡眠と並んで、

「健康に年齢を重ねるための選択肢」

としてクレアチンを見直してみる価値はありそうだ。

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参考文献

Chun J, Liu Y, Kibler GL, et al. Effects of creatine supplementation with and without exercise and diet intervention on body composition, cognitive function, and markers of health in middle-aged and older adults. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2026;23(sup1):2716273. DOI: 10.1080/15502783.2026.2716273. (PubMed)

Xu C, et al. The effects of creatine supplementation on cognitive function in adults: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Nutrition. 2024. (PubMed)

Liu S, et al. The impact of creatine supplementation associated with resistance training on muscular strength and lean tissue mass in the aged: a systematic review and meta-analysis. European Review of Aging and Physical Activity. 2025. (PubMed)

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